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「無邪気の消失」

「無邪気の消失」著GUEST OF SPACE

―ピーンポーン―

そうだ、この瞬間だ。この瞬間こそ、俺の待ちわびた合図だ。

「はーい、どなた~」油のシミがところどころに見受けられる黄色いエプロンをつけた子小太りの中年ババアがでてきた。特に何も特技がなく、何となくバラエティ番組をみてゲラゲラ笑うだけが能の、おそらく何十年もセックスレスにちがいない風貌だ。クソババアめ。

「もう、なによ!」と言って元々プリプリしているシミだらけの肌をさらに醜くプリプリさせて、家の中に戻っていった。

っふ。やはりババアの怒った顔ほど、傑作なものはない。今日もクールに大成功だ。
俺は何事もなかったかのように、物陰からでて岐路につく。

もう、俺は自分の住む街の中ではやりつくした気がする。

俺の、クールでスイートなピンポンダッシュを。

俺は、ピンポンダッシュのプロフェッショナルだ。26年間、ノーミスでピンポンダッシュを成功させているのだから、プロといわずに何といえようか。

狙い時は、夜7時。まだ夫も帰っていない時間帯であり、妻が一人でいるような頃合いである。大抵、この時間帯からくだらなくて実のないバラエティ番組がはじまり、主婦は食事の支度を一通り終えた後、惰性のストレスをそのナンセンスな番組をみて、笑ってぶちまけるのであって、そんな解放されているときに、ピンポーンなんてインターンホンがなったら、それだけでイライラするってのに、当のピンポーンをした人間がいないのだから、それはそれは腹がたつに違いない。その瞬間の中年のババアの顔ほど傑作なものはない。元々世の外に見せられるような顔の造形をしていないというのに、眉間にしわを寄せ、もともとクシャクシャな肌がさらにクシャクシャになり、シミがいろいろな島国となって浮かんでくるのだ。その様ほど笑えるものはない。

俺は、そんな様子を見たいがために、クソガキのように走って逃げないで、例えば自動車の物陰にひょいっと隠れて、そんなクソババアのクソフェイスを見物するのである。

ああ、なんて、俺はクールなピンポンダッシャーなのだろう。俺ほど完璧に、ピンポンダッシュの髄まで楽しめるような奴は世の中にはいない。ただ、やはり限界はある。俺の住む街では、もう飽和状態だ。やりすぎた。そろそろまずい。クールな俺は見切りの付け方も完璧だ。そろそろ、他の街でやることにしよう。

というわけで、次の日から、俺の住むアパートの最寄り駅の一駅前で降りて、クールなクールなピンポンダッシュを遂行することにしようと計画を立てた。

次の日、くだらない営業の仕事をクールに終え、人の体温やら吐息がグチャグチャになっている満員電車に揺られ、一駅前の駅で降りた。

さあ、スタートだ、俺のクールなピンポンダッシュの新章が幕を開けるぜ!

ピーンポーン。ピーンポーン。ピーンポーン。ピーンポーン・・・・・。

さっそく10件ほどその場で決めたターゲットにした家々でクールにピンポンダッシュを成功させた。ちょろい。ちょろすぎる。いやあ、クールだ!俺は、なんてクールなんだ!!

さて、もう疲れたし、クールに帰るかと駅に戻ろうとしたときである。左斜め48.5度前方に、俺のクールな眼を釘づけにする表札がインターホンの上に付けられている家を見つけたのである。

―この家のインターホンで、ピンポンダッシュを成功させた人に百万円プレゼント!―

・・・これは、一体どういうことだ?ピンポンダッシュを成功させたら、百万円?
かなり、怪しい。とてつもなく怪しい。だいたい、ピンポンダッシュを成功させるということは、その家の奴にピンポンダッシュをやった奴の存在は知られないことになるから、百万円なんて渡せないじゃないか。この家主は馬鹿にちがいない。

しかし、26年間ノーミスでピンポンダッシュを成功させた俺のプライドの血が騒ぐ。

クールなピンポンダッシャー!俺!

さすがに、クールな俺も緊張した。失敗は許されない。その家の様子を見ながら隠れられる場所を探す。それは、すぐに見つかった。向かい側の家の車庫が開いている。そこにすぐに隠れれば問題はない。イメージする。俺のいつもの可憐でクールなピンポンダッシュの姿を、細かくイメージする。

どうイメージしても、成功の二文字以外は俺の中には浮かばない。

いざ!クールに、百万円、いただきまーす!!

―ピーンポーン―

よし!さて、クールに向かいの車庫に隠れよう!と思った瞬間、異変が起きた。

俺の指が、そのインターホンの中に吸い込まれているのである。

な、な、な、なんだってんだ!!俺のクールな人差し指が、吸い込まれていく。俺の、クールな26年間の結晶である人差し指が、どんどん吸い込まれていく。はずそうとしてもはずれない。どんどん吸い込まれていく!

ちきしょう!なんだってんだ!やがて、変な機械音がしはじめた。

ウイーーーン!!ガガガガガガガ!!!

「あああああああ!!!!お、お、俺の指が~~~~!!!!!!!!」

吸い込まれた人差し指が俺の手からぶった切られた!!

血がドロドロでている。

「うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

俺は、とりあえず、イメージした通り、向かい側の車庫に隠れる。

な、なんだってんだ!!一体なんだってんだ!成功じゃないのか?・・・なんで、俺はあのインターホンを押しちまったんだ!だいたいおかしいじゃないか、ピンポンダッシュで百万円なんて夢物語じゃないか!

だが、俺の人差し指は現実にぶった切られたのである!俺は混乱した。

そんな時、ランドセルを背負ったクソガキ二人がこちらに歩いてきた。
そして、そのうちの一人が、そのインターホンの存在に気がついたのである。
「おい!みろよ!ピンポンダッシュを成功させたら百万円だって!」
「本当に!すげぇ!DS買えるぜ!DS」
「DSもPSPもPS3もXBOX360も、なんでも買えるぜ!」
「おっしゃあ!やろうぜ!やろうぜ!」
「おう!」

最初に気がついたクソガキがインターホンに指を近づける。

俺は、危ない!と言おうとしたが、

ピーンポーン!

・・・時すでに遅し・・・と思ったら、そのクソガキどもは、押した瞬間、一気に走ってその場から逃げた!

・・・どうやら何事もなかったらしい・・・・。・・・ということは、あいつらは成功したってことになるのか・・・・?

ガキどもが戻ってくる。
「これで百万円だぜ!いえい!」
「そうだな!DSDS!」

すると、家の中から、くたびれた袴をはおった老人がでてきて、だまってそのガキどもに札束を渡した。

「やったー!DSDS!」
「やったー!アイマスアイマス!」
ガキどもは喜んで帰って行った。

・・・・なっとくいかねぇ!

その老人が家にもどろうとした瞬間に俺は車庫から飛び出して、「てめぇ!俺にも百万円よこせよ!」というと、老人は、「お前は失敗した。そんなピンポンダッシュの失敗作などいらんのじゃ。だから、わしは親切心でお前の指をぶち切ってやったのじゃ」

「おい!てめぇ!いったいどういうことなんだ!ああ!なんでクールに遂行した俺は失敗で、あいつらガキどもには百万円を渡すんだ!説明しろ!」と俺は、ブシュブシュ血を噴射させながら叫んだ。

すると、クソ老人は、一言ささやいた。

「お前は、ダッシュをしていない」


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ショートストーリー「恋と心と僕」

「恋と心と僕」 著 G.O.S.

恋って漢字をばらして考えると「亦」と「心」という漢字の二つに分かれるのを発見したとき、あぁ、だから、恋っていうのは、なにやらよくわからないものなのかと一人で勝手に納得してしまった。つまり、誰かの心を求めて、それを愛でては、捨てて、また、違う誰かの心をもとめて、それを愛でては、また捨てて、また違う心、また違う心、亦心、亦心、亦心って、螺旋階段を上ったり下りたりしているようで、目が回って仕方がないとおもうのだが、人ってものは、その行為自体は飽きずにほいほいゴキブリみたいな迅速な気持ち悪い動きで、菌を数え切れないくらい抱えて、亦心、亦心、と求めて求めて求めて求めて、あぁ、それが恋っちゅうもんなのか、と思うと、僕はなんともはがゆいというか、僕という一人の人間が、その摂理に則ってない、いいのか、それは、それは本当によろしいのですか、でも僕は僕であって僕でしかないわけで、恋ってものを考えるのだった。

僕は久しぶりに、「心」と書いて、「しん」と読む名前の幼馴染の女と、なにやらほこりが妙にまっていて、空気も悪く、日の光もあんまり入らないのだが、へんにアンティークな明かりと店の雰囲気が、まぁ、なかなか評価できる、でも、一番評価できるのはコーヒーの味である、「ボルジュボルジュ伊藤」という、もう何を主張しているのかさっぱりわからない店名でなぜか「佐藤」さんが経営している喫茶店の窓際一番奥のテーブルで、いやあ、本当に久しぶりに会う約束して、今はおいしいコーヒーをブラックで飲みながら会話をしている最中。

いやぁ、ひさしぶりだね、仕事のほうは、どのような按配なの、とたずねると、まぁぼちぼちよ、と普通の回答がきて、そうか、それならよかったと僕。少しの沈黙の後、そっちはどうなのと聞かれたので、まぁ、ぼくもぼちぼちだよ、なんてやっぱり普通の回答をしてしまったのであって、いけないこれでは会話がまるっきり弾まないではないかと久しぶりに会ったのになんだ、この体たらくぶりはと僕自身に喝をいれて、相変わらず男を鞍替えしているのか、と一番気になっていることを、そんな喧嘩越しの言葉でもって勢いよくたずねたら、なによその言い方はちょっとひどいじゃないの。べつに鞍替えしているわけじゃないわよ。ちゃんと好きになるのだけれど、なんかすぐに飽きちゃうのよ。で、よくわからないけどすぐに素敵な男が目の前に現れるであって、私はべつに鞍替えっていうことをしているつもりはないの。ちゃんと愛したうえで、飽きるのよ、と反論してきた。

そうなのか、そうなんだ、悪かったよ、でも、お前はちょっとすぐに男をかえすぎな気がするんだよ、もって3ヶ月くらいだろ、いっつも、なあなあなあなあ、男が悲しむだろそんな、それにお前自体きつくないのか、そんなにどんどん男を変えて、と言うと、なんかすぐ飽きるのよね、2ヶ月前から付き合っている男がいるんだけど、もう別れようと思うの、どうしてだい?と聞くと、昨日はじめてエッチしたんだけど、ひどいのよ、その彼、手こきばかり私にもとめてきて、私はなすすべなしよ。そんな性癖をもっていたから、なんか嫌になっちゃったのよ、私がわるいわけじゃないの、いつも男のほうが、変なのよ、付き合う前は素敵に見えるのに、いざ彼氏ってものにすると、もうだめなのよ、と言ってきたので、はっ、なんだなんだ、男のせいにしやがってさ、なんでも、男のほうが汚らしいと思ったら大間違いだぞ、お前ら女のほうだって、十分汚いんじゃねぇの、お前がいい例だ、そうやって男を誑かしては、捨てて、誑かしては、捨てての繰り返し、といってみると、なによ、だからはじめはちゃんと好きになるっていったじゃないの、誑かしているつもりはないわ、ぜんぜんない、ただ、だめなのよ、男のほうが失望させるのよ、私に罪はないわ、男のほうがちゃんとアプローチっちゅうか、そういうものをもっと、もっと積極的にかけてこないのがわるいのよ、なによ、付き合ったら、肉、肉ばっかり、そんなに肉、肉いうんであれば、畜生とでもすればいいのよ、とイライラした面持ちでこちらに反論してきたので、いや、なにも、すべての男がそういうわけじゃないだろ、肉、肉だけの男だけじゃないだろ、ちがうそれはちがう、ただ単に、それは、お前が好きでも、お前の付き合ってきた男はお前のことなんて好きじゃなかっただけだろ、それは、ただ単に、お前がどんどんアプローチかけたから、向こうもその気になっただけだろ、お前けっこう可愛いから、これは、いただきだ、って向こうが思っただけであって、そいつらは、お前のことを本当に愛しているわけじゃないんだと思う、そうだ!ぜったいそうだ!お前は、お前のことをちゃんと愛してくれるやつを好きになったことが一度もないだけなんだよ!と、こちらもイライラしてきた。

なによ、久しぶりに会って、それ、なによ、それ、久しぶりにあって、説教、私に説教ですか、貴方が大事な話があるっているから、かけつけてきたっていうのに、なに、この不愉快、この店の名前なみに不愉快だわ、まあ、このコーヒーはおいしいけど、なにがボルジュボルジュよ、なによ、それ、貴方の頭の中のぐちゃぐちゃしたその、その、へんな説教くさい頭を表している擬音語だわ、間違いないわ、っは!そんな説教をいうために、私を呼んだのであれば、私は帰るわ、不愉快だもの、なにが、お前のことをちゃんと愛してくれるやつ、よ、そんな、私の恋愛にいちいち、口ださないでよ、ねぇ、恋なんて、そんなもんでしょ?これだけ、世界中に男女、男女がいるのに、そんな一人でおたかくとまれるような男女、男女がいるわけないでしょ、私は健全よ、むしろ貴方のほうがおかしいわ、社会人になっておいて、いまだに、女の味を知らないのだものね、貴方こそどうかしているわよ、風俗にでもいきなさいよ、いつまで、そのぶらぶらしたものをぶらぶらさせたままにしているのよ、気持ち悪い、そっちのほうが気持ち悪いわ、ねぇ、そうでしょ、私のほうが健全よ、この童貞男!!となにやら怒号された。

僕は、かちんときて、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ!!!最後の言葉だけは気にくわないぞ!たしかに説教くさい話になってしまったのは謝るけど、と、とにかくだな、やめてくれよ、僕が苦しくなるんだ、そういう男をぽんぽんかえるっていう行為をお前がしているところをみていると僕が苦しくなるんだ、やめてくれよ、というと、なによ、なんで貴方が苦しくなるのよ、意味わからないわ、といってきたので、わからないのか、そんなに男と付き合っていてわからないのか、いや、僕がいままでいわなかったのがわるいんだけど、わからないのか!恋って漢字は、ばらしてみると、亦心になるのは、わかるよな?お前が、亦心、亦心、亦心、ってたしかにこの漢字の通り、活動しているのは健全なことなのかもしれないけど、僕は、僕は、いつまでたっても、心、お前だけなんだ、お前しか、僕は考えられないんだ、ずっとそうだった、ずっとずっとずっとずっとずっと、お前しか見ることができなかった、それは、なんどもあきらめたさ、お前が男をつくって別れてはつくって、っていうその行為の間間で、あきらめたり、また僕の気持ちを吐き出そうと奮闘したり、なんども、なんども、その繰り返し、お前が亦心、亦心、って男を変えるたびに、僕の気持ちも亦心、亦心、亦心、どんなにあきらめても、やっぱり僕は、亦、心、お前だけしか考えられないんだ、お前みたいなどうしようもない女を俺は、愛してしまっているんだ、なぁ、答えてくれよ、亦心亦心亦心亦心、最後には僕の心に行き着いてほしいんだよ!本当の恋をしているのは、僕なんだ!と、わぁっっといいたいことを言ったら涙がでてきた。

なによ、それ、意味わからないわ、ちょっと、泣くのやめなさいよ、みっともないからと、心は僕にいい、でもなぜかちょっと微笑んで、ほんのり苦いコーヒーをずずっと音をたてて飲み干した。


ショートストーリー「ヒップと妖精と僕」

ヒップと妖精と僕

僕は痴漢である。目の前にお尻があったら、触りたくなる。なぜ、まわりにいる男たちは、満員電車の中、女性と密着した状態になるにもかかわらず我慢できるのだろうか。
僕にはそれが理解できなかった。
ちらと下を向くと、そこには柔らかそうなお尻たちが混在している。
通勤ラッシュ時の満員電車の中、僕は、右斜め四十五度にあるお尻に標的を定めた。

普段はスカートを穿いている女子高生やOLを狙っているのだが、たまには、ジーンズを着ている女性を狙うのも一つの余興として、この性癖を発揮するのも悪くはない。

スカートよりも、ズボンを穿いている女性のお尻はより輪郭がはっきりしていて、その形に翻弄される。ただ、スカートの場合は、手を入れることができるから、普段はスカートの女性を狙っているということは、いうまでもないだろうが。

今日の標的のジーンズを穿いている女性のお尻の曲線に魅せられない男はいないだろう。女も惚れるであろう引き締まった、そして、とても、とても「柔らか」そうなお尻であるのだ。

ごくりと唾を飲む。さあ、いざ、意を決して、そのお尻に右手を―

かちり。

突然、僕の腕時計の針の音が電車の中で響き渡った。
「な、なんだ・・・?」
腕時計を見る。時計の針が止まっていた。
異変はそれだけではなかった。

『すべて』がとまっていた。電車も、人も、何もかも。隣にいる禿げた男に声をかけても、身体をゆすっても反応しない。

つまり、『時間』が止まったということか。動けるのはどうやら僕だけらしい。

「な、なんなんだ・・・」

「こんにちは」

どこからか、声がした。とても儚く美しい声だった。電車の中全体に響き渡る。

あたりを見渡す。しかし、その声を発したと思われる人はいなかった。

「ここだよ。貴方の『標的』のポケットに注目」

「え?」

僕は、右斜め四十五度の標的にしていたお尻をみる。

その標的のお尻を覆っているジーンズの後ろポケットから、ぴょこんと「顔」が出ていた。

「こんにちは。私は、妖精です。よろしくね」

「よ、ようせい??」

「そうです。私は、妖精です。よろしくね」

なにがなんだか、さっぱりわけがわからなかった。その「妖精」は、本当に誰もがイメージするような妖精の風貌をしていたが、異様に頭がでかい。とにかくでかい。最近の萌えキャラといわれる美少女キャラクターの不自然な目の大きさと、顔の大きさが一つのその「萌えポイント」であるのであろうが、この妖精の頭のでかさもそれに該当するものなのかもしれない。つまり、かわいいのである。なんか、異様にかわいいのである。そりゃそうだ、妖精だもん・・・

「って、なんだぁ!よ、妖精?ちょ、ちょっとまて・・ってなんか僕しかうごいていないんだけど―」

「あぁ、時間をとめました。あなたとお話したくて・・・」
な、なんといった?この妖精さんは。こんな、毎日中央線で、女のお尻を追いかけて、その、お尻を触ったりお尻を触ったりお尻を触ったりしているような僕みたいな破廉恥で、低俗で、もうどうしようもないくらいにどうしようもない男である僕と、この萌えキャラクターも驚きのかわいいかわいい自称妖精が時間をとめてまで、何を話したいというのだ、というより、僕はいま、ユメをみているのだろうか・・・?わけがわからない。時間をとめた?それは、世界中の時間が止まっているということなのか。まぁ、そうしないと世界に隔たりができてしまう。もし、この電車の中だけ時間が止まっているとしたら、そして、この電車の中に、なんかすごい株主がいたとしたら、それはすごい損失を受けてしまう可能性もあるのではないだろうか・・・。

「あぁ、大丈夫ですよ。世界中の時間がとまっていますから。被害はないです」

まるで、僕の心を読んでいるようにそんなことをいってきた。いや、妖精なんだし、時間をとめることができるくらいだし、そんなことは容易いのかもしれない。

「妖精・・・さん。もしかして、僕の心を読み取れるのですか?」なんて、ばかげた質問をしている僕がいた。

「そんなことできるわけがないじゃないですか。そんなことができたら、話す必要ないでしょ?相手の心を読み取ることなんてできたら、人間は言語なんて必要としないでしょう?まぁ、言葉っていうのは、自分の気持ちを発するだけではなく、偽ることにも使える不思議な魔法のようなものなのですけれどね。でも、私には、貴方の気持ちを正直にきかせてほしいのです」

なんか、哲学的なことを妖精は僕にいってきた。

「な、何を聞きたいんだ。僕に・・・」

「そんなのきまっているじゃないですか。なんで、貴方はそんなに女のお尻を触りたくなる衝動に駆られるのか、ということです。私には全くその意識が理解できません」

「そ、そんなの、本能ってやつだよ。逆に僕から言わせてもらえば、どうして、みんなこんな満員電車の中で、こんなにも身体が密着しているというのに、我慢できるのかが、わからないよ」
そういえば、今気づいたのだが、満員電車の中だというのに、なぜか息苦しくない。これも、この妖精の力なのだろうか。

すると、妖精は高らかに笑い始めた。うるさい。

「どうして、わらうんだよ」
「あはははは。す、すいません。貴方があまりにも素っ頓狂なことをいっているので、笑ってしまいました。本能という言葉がでてくるとは思いませんでしたからね」

「な、なにが、おかしいんだよ」なんか、腹立つ。

「本能に従って、お尻を触っているというのが、おかしいのです。それは、『本能』の一部であることはまちがいないのですが、本当の本能は、貴方の生殖器を女性の生殖器に挿入することをいうのではないのですか?本当の本能は、『繁殖』です。本当に本能にしたがうのならば、貴方はこの満員電車の中であろうと、全裸になって、この女性のジーンズを無理やり脱がして、生殖器を挿入するはずです。でも、貴方はそれをしない。つまり、それは、『本能』ではなくて、一種のスリル、または、快楽を味わいたいだけなのですよ。まあ、実際人間は、性行為自体を『快楽』にしてしまっている愚かな生物ですけどね。でも、貴方のやっていることは、本能というものにはあまり該当しないものだとおもいます」
なんか、すごく屁理屈っぽいことを妖精はその美しい声でいってきた。その声で、生殖器とかいってほしくなかった。

「わけわからん。でも、女性の身体を触りたいっていうのは、一種の本能っていうか、煩悩っていうか、そういうものだろう」

「そうなのかもしれませんね。では、なぜ貴方はもっと堂々と触らないのですか?」

さりげなく話をすりかえられた気がしたが、まぁ、いいだろう。

「そりゃあ、人目があるからだろ。ばれないようにさわらないとな」
「なぜですか」
「そりゃ、つかまったら、いろいろ厄介だからだよ」
「では、触らなければいいではないですか。そんなにつかまるのが恐いのだったら」
「そりゃ、そうだろうけど。だから、お尻にとどめているんじゃねぇか。ここで、胸とかも触ったら、確実につかまるぞ」
「つかまったら、なんでそんなに厄介なのですか」
「そりゃ、恥ずかしいだろう。まず。つかまって、ホームを駅員に連れられていたら、『あぁ、この人は痴漢なんだ。嫌だ嫌だ』とか思われながらじろじろ見られるだろうし、最悪、会社をクビにされるかもしれないだろう」

「やはり、矛盾していますね」
「なにが、矛盾しているんだ」
「貴方は、本能に従って、痴漢をしているといっていましたが、結局、この人間が作った『社会に従って』いるというところが矛盾しているのです。先ほど、他の男たちが、なぜ我慢をできるのかが、疑問だといっていましたね。それは、皆さんも貴方が捕まったときのさきほど仰っていた想定が頭の中にあるからです。痴漢をしたら法律で動いているこの社会によって、罰せられ、蔑まされ、恥ずかしい思いをするということをわきまえているのです。しかし、実際のところは、潜在意識のなかでは、皆、触りたいのです。お尻を、胸を、股を触りたいのです。膣をなめ回したいのです。生殖器を今すぐにでも挿入したいのです。でも、皆そんなことはしない。そんなことをしては、我々人間が創り上げた社会に反した一種の社会不適合者とみなされてしまう。そしたら、いきていけない、と思っているのです。だから、皆さん我慢できるのです。いや、それは我慢というよりは、ある種『ルールに操られている』のでしょうね。人間は社会のルールにのっとって生きている生き物なのです。人間ほど、脳が発達している生き物はいませんが、なぜか、人間は、その発達しすぎた脳のせいで、逆に、自ら牢屋を作った不思議な生物なのです。いくら、どこかのロックバンドが、『俺はアナーキーになりたいんだ』とか歌っても、アナーキーになれるはずがないのです。むしろそんなことを歌っている人のほうが、社会というものに強く支配されている不幸な存在なのですよ。笑ってしまいますね。人間の在り方というものは本当に笑ってしまいます。しかし、この『社会』というのは悪いものではないですよ。鳥でいう、巣のようなものですからね。ただ、人間は自分たちの巣を複雑につくりすぎた。実際、一番頭が悪いのは、人間なのかもしれませんね。・・・おっと、話がそれてしまいましたね。まぁ、つまり、貴方も結局は、社会に縛られているということです。私には、痴漢の神経が理解できないのです。考えてもみてください。痴漢をする人の心って、あまりにも錯綜していると思いませんか?その貴方のいう本能に打ち勝つことができずにお尻を触るのですけれど、でも、『社会』からは、恥辱を受けたくない。だから、わざわざ、触りやすくてなおかつわかりにくい満員電車という場所を選んで行動に移る。まとめると社会のルールにおびえながら、恥辱を受けたくないあまりにわざわざばれにくい場所を計画的に選んで、でも本能に従って、社会的に恥辱的な行為、つまりお尻をさわる。ほら、心の中がぐちゃぐちゃじゃないですか?」

「・・・・・・」僕には、この妖精のいっていることがぜんぜんわからなかった。それにお話したいとかいいながら、一方的にしゃべっている妖精の態度が気に食わなかった。

「うーん、そんな理屈っぽいことをいわれても、僕にはよくわからないわ」
僕は、この状況を打破したかった。
「なぁ、もう、時間、とめるのを止めてくれないかな」
「わかりました。ただし、注意を一つ」
「なんだ」
「次、貴方が痴漢をしたときは、確実に捕まります。魔法をかけておきましたから」
がたんごとん。がたんごとん。とつぜん、電車が動き出した。標的をみる。そのジーンズの後ろポケットにさきほどまでいた妖精は消えていた。

「なんだったんだ・・・・」

わけがわからない。僕は混乱した。

次の日、僕は、女子高生のお尻を触った。

捕まった。

(了)

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