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Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)「PURPOSE TOUR」 on 8/13・14 日本公演への感想

両日行ってきました!2日間のジャスティン・ビーバーの来日ライブ!

今回のライブは、昨年ジャスティンがリリースした快作アルバム「PURPOSE」を引っ提げたツアーの一環での日本公演。
会場は幕張メッセ1~3ホールという大舞台。かなりの収容人数だったと思うが、チケットは即日完売したということで、ジャスティン・ビーバーの人気がうかがい知れる。

ちょっと変な書き方をするが、ジャスティン・ビーバーはショーを行うパフォーマーとして、ポップスターとして、とても「ジェントルマン」だったということを伝えたい。本当にすばらしいショーだったので、いくつか書きたいと思う。

まず、両日ともライブがアナウンスされていた定刻にスタートした。びっくりするくらいほぼ時間ぴったりに。フェスでもないのに、だ。
これには驚いた。他の国での公演でも、もしかしたら彼は定刻開演に徹しているのかもしれないが、特に日本人は時間にうるさい。そこを踏まえて、しっかりと定刻でスタートさせるという文化に合わせてきたと言ってもいいのかもしれない。当たり前のようで、これはなかなかないことである。

会場が暗くなった瞬間、悲鳴のような歓声があがる。さすがは世界トップクラスのポップ・スターである。

映像演出でまずはスタートする。崩れ去る瓦礫とともに落ちていく一人の男の影。もちろん、それはジャスティン・ビーバー。どんどん自分というものが、「崩れていく」中、会場に響く音楽がボルテージをあげていく。

そして、いよいよ本格的に1曲目がスタートし、ジャスティン登場か!?というところで、崩れたはずの瓦礫が一気に上に戻ってきて「PURPOSE」という文字を形成。その直後にジャスティン・ビーバーが姿を現し、「PURPOSE」1曲目に収録されている感動的な「Mark My Words」がスタートする。それは、ジャスティン・ビーバーが再びミュージシャンとして「再生」し「新生」したことを告げるライブの始まりだった。完璧だ。

絶叫のような歓声が上がる中、ジャスティン・ビーバーはランウェイまで歩いてくる。ジャスティンがちょっと観客側に近づいたり動いたりするだけで、ギャー!という金切り声があがる。その観客の興奮がまた最高だった。

そのあとも、旧作の人気曲を織り交ぜながら「PURPOSE」に収録されている曲を中心に、ジャスティンはパフォーマンスを披露していく。「もうジャスティンいらないんじゃないの?(笑)」と思わず言いたくなるくらいの映像演出、数多くのすばらしいダンサーたち、そして重厚な演奏を終始行ってくれたバンドを率いて。

ライブで披露されるR&Bを基調とした1曲1曲が本当にかっこいい。「これは、まあふつう」といった曲、展開が一切ない。いかに彼がすごい「ポップ・スター」であるか、ばっちり証明していた。バンドのめちゃめちゃかっこいい演奏により、そんなソングスのもつカッコよさがさらに拡張されて、もう無敵だったといえる。

・・・と書いておきながら、ここで落とすようなことを書くが、彼はライブ中、ろくに歌っていない。ほとんど、いわゆる口パクである。まともに最初から最後まで歌った曲はおそらく中盤のアコギでの弾き語り3曲と、あと2~3曲くらいだったのではないだろうか。
ライブ終了後、ツイッターで観客の反応をみると「マジで、ジャスティンひどかった!ほっとんど口パクだったじゃん!客をなめすぎ!」というツイートがあったくらいだ。

ただ、ひとついえるのは彼がまともにしっかり歌っていたと思われる曲のパフォーマンスにおける、彼の歌唱は最高だった。のびやかな高音と美声が会場全体に突き抜けていた。特にアコギでの弾き語りの3曲における彼の美メロと美声にはメロメロになった。
おそらくちゃんと歌おうと思えば、彼は録音をながすことなく全曲歌いきることができたと思う。しかし彼はそれをしない。

正直、俺も初日はそれにとまどった。あまりにもジャスティンは歌わない。むしろ歌う場面だというのにマイクをそこらへんに放り投げて、ダンスに徹したり、客を煽ったりすることだけを行う場面も散見された。じゃあ、ダンスがすごく激しいかと言ったら、正直普通だ。「ジャスティン、ダンスはんっぱねぇ!」といえることは全くない。ポップスターという位置づけとしては・・・、うん、普通だった(笑)。

ただ一ついえることがあった。

なんか、ずっと、カッコいいのだ。

・・・いや、というかずっと「カッコつけている」のだ。

手を動かして客を煽っている場面、水を飲んでいる場面、ダンサーをねぎらうかのように手を取り合う場面、もちろんマイクをもって歌っている(歌っているようにみせる)場面においても、いちいちカッコよくみえるように動いているのだ。

カッコよくみえるのならば、音楽はバンド演奏と「録音」にまかせて、もはや口パクすらせずに、マイクを放り投げてダンスに徹する。
そんな「カッコつけ」がライブの最初から最後まで貫かれていたのだ。

ここで俺は、はっとした。彼がカッコつける姿をみるたびに、自然と俺もバンド演奏と彼の録音の歌声にどんどん乗せられていって、ボルテージがあがっていたのだ。もちろん女の子たちなんて、ジャスティンがカッコつければカッコつけるほど、ジャスティンにくぎづけになっていく。そして時折聴かせる彼の「生声」がこれまた会場を熱狂される歯車の一つとして「機能」していくのだ。

そんな彼の姿を2日間通して観て、俺は思った。彼は、あくまでみんながみていてカッコいいと、楽しいと思ってくれるステージをつくることに徹しているのだと。

そのために一番必要なのは、みんなが会場まで来てくれる最大の理由、つまり、ジャスティン・ビーバーという存在そのものを「カッコイイ」ものとして観客たちの目に焼き付けることだと。それこそが「ショー」を一番の成功に導くものになるということを、彼は受け入れたうえで、あえてマイクすらもたずに「カッコイイ」をつくっていくのだ。

繰り返しになるが、だから俺はそんな彼のことをポップスターとして「ジェントルマン」だといいたいのだ。

・・・最後の締めとして、これまた繰り返しになるが、そんな「カッコつけ」が成立する理由は、もちろん、曲がいいからだ。「PURPOSE」に収録されている曲は美しいメロディとノリノリのダンスミュージック、そして彼のR&Bへの愛に満ちている。そんな曲たちがあるからこそ、彼はカッコいいのだ。

本当に、すばらしいSHOWだった。

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詩「軋む魂」

軋む魂 作:GOS


愛しているなんて言葉を発しないまま続く毎日
今日が昨日を追い返すことなく
昨日が今日を引きずっていく

満員電車に揺られうつむき気味の顔が続く毎日
誰かの鞄の角に身体を切り刻まれ
据えた臭いと湿気に血が滲む

愛しているなんて言葉を発しないまま続く毎日
今日が昨日を追い返すことなく
昨日が今日を引きずっていく

鍵かけるときも開けるときも眠気と倦怠が続く毎日
突き刺さるようなブルーライトとインクのレッドに汚濁され
世話の投げ合いと数字の羅列が目に滲む

愛しているなんて言葉を発しないまま続く毎日
今日が昨日を追い返すことなく
昨日が今日を引きずっていく

カフェインと糖と批判と愚痴の苦みと甘みが続く毎日
自動販売機とコンビニに手足を伸ばし
掴んだもので喉を潤せども心は枯れて涙が滲む

愛しているなんて言葉を発しないまま続く毎日
今日が昨日を追い返すことなく
昨日が今日を引きずっていく

愛しているなんて言葉を発しないまま

これぞ最高傑作!!安室奈美恵のニューアルバム「_genic」を聴いた!

2015年上期もそろそろ終わり、下期に入ろうとしている6月10日、ついに安室奈美恵が2年ぶりのオリジナル・アルバム「_genic」をリリースした。

これは小室時代の安室奈美恵のアルバムを含めて、安室奈美恵の最高傑作である。

まず、ジャケットが最高傑作。鮮麗されたメタリックなカッティング・デジパックからみえる安室奈美恵の視線がとても危険だ。デジパックからブックレットをひっぱりだすと、安室奈美恵のフェイスが登場。おそろしく美しい(ちなみにアップ写真は俺が購入したCD+Blu-ray盤のもの。CD+DVD盤、CD盤それぞれが違うカッティング・デジパックとブックレット・ビジュアルになっている)。

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そして、要の音楽が最高傑作。今回は「リバイバル」がテーマとなっており、安室奈美恵の音楽のSTYLEを形成してきた「ジェニック=遺伝子」といえる80s、90sサウンドがふんだんにとりいれられている。

2013年にリリースされた「FEEL」において、現在のミュージックシーンのトレンドの潮流をつかみきった未来志向のダンス・ミュージックを、安室奈美恵は見事に彼女自身の「スタンダード」として確立した。

そんな強力な状態となった彼女のもとに、80s、90sサウンドである。これが、最強にならないはずがない。

「_genic」は、「リバイバル」ともいえるサウンドをfeatureすることで、安室奈美恵が新たなfutureを切り開いたアルバムなのだ。

さらに、ミュージックビデオが最高傑作。
DVDまたはブルーレイには新作ミュージックビデオが5曲収録されているのだが、これが、またすごい。
とある疑似体験ができるインタラクティブ・ビデオから、ワンテイクでとられたキュートなビデオ、そして、安室といったら、やっぱりダンス!すさまじいダンスをみせているミュージックビデオはもちろん、希望へとつながるすばらしい美しきメッセージがこめられたMVも収録されており、とにかく感動。

特に、ダンスが中心となっているFashionistaとStrangerという楽曲のミュージックビデオを見ている間は、涙と鼻水がぼろぼろでてきて、息の仕方がちょっとよくわからなくなった。大げさに書いていない。マジである(笑)

とにかく俺がいいたいことは、安室ちゃん 大好き!



短編「ストーキング・プロフェッショナル」

 窓の光を反射して輝く彼女の白いうなじをそっと、静かに、私は捉えた。その輝き。何者にも侵されない美しさそのもののホワイト。

 丸テーブルにたてかけた、少し大きめの丸い鏡の前で、彼女はそっと自分の長い髪をなではじめる。まるで愛しい子供の頬をなでるように。その黒髪は、あらゆる汚れを絶つようなまばゆいばかりの黒髪だった。確固たる意志をもっているかのようなブラック。

 その黒髪の一部が、そっと白いうなじへと流れ、ふりかかった。そこに存在する白と黒の完璧な対比を私はしっかりと窓の外からのぞきこむ。この対比。この完璧な対比。私はこれを、私の雇い主に報告できることに喜びを感じた。それがいかにこの世界から隔絶された、「完全」なのかということを、雇い主に知ってもらうことは、私の使命の一つだった。
 
彼女はそっと立ち上がり、彼女が身にまとっているシャツを静かに上へとたぐり寄せていく。黒髪とシャツが摩擦をおこしている様子を私は静かにじっと窓の外からのぞきこむ。やがて彼女の体から離れようとしているシャツのすべてが彼女の後頭部に集中する。シャツをもつ彼女の両の手が上方へと放たれる。それと同時に、シャツに摩擦で、はりついていた彼女の見事な黒髪のすべてが、天上から彼女の背にすっとふってきたかのようにながれ落ちた。彼女の美しい背の肌がもつ白とながれ落ちた長髪の黒の完璧なる対比は、まさに美、というほかなかった。

 私は、そこに新たな色の発見をする。彼女から発せられている白と黒の間にピンクのラインが見えたのだ。それがいったい何なのかはすぐにわかった。彼女が「こちら側」に体を回転させたからである。彼女の背に見えたピンクのラインは彼女の胸元を覆っているピンクの布の一部だった。そのピンクの布は、とてもよくピンと張っていた。布の上方には、確かな黒とは言い難いが、とても濃い灰色の線がみえていた。ピンクの布の下からつきあがっている二つの盛り上がりの間からひかれたその灰色の線は、何か、のぞいてはいけない秘密を抱えているようだった。その深淵とも言うべき灰色の線を形成する、つきあがった白の二つの盛り上がりそのもの、秘密の原因を暴くために、私は窓の外から彼女を観察することを雇い主に命じられたのだという、どこか確信めいた強迫観念にとらわれた。

 彼女は私がいる窓の外側を、目を細めて見はじめた。そして彼女は、はっとし、あわてた様子でテーブルの方にかがみこんだ。ピンクに支えられた二つの盛り上がりが、彼女のかがみこむ方向に同時に吸い寄せられている様子をわたしはしっかりと捉えた。やがて、彼女は黒い縁の眼鏡をかけて、窓の外に向かって目を見開いた。その目線は私の「目」と「体」を捉えていた。それは明確だった。私の目線と彼女の目線は寸分違わず一致していたからである。彼女は一瞬完全にかたまった。そこにうまれた静寂。彼女のもつ肌の色、白のように何者にも侵されないその静寂を、私は完璧にとらえ、記憶した。

 しかし、その静寂は本当に一瞬のものだった。彼女は狭い窓の内側を、ダッという鈍い音を発しながら走り、窓の外側と内側を断絶するカーテンに手を伸ばし思いっきり閉じて、私と彼女の目線の交差を断ち切った。その時の彼女の表情は、閉じられたカーテンのしわのように、歪んでいた。

 しかし、私は、彼女のもつ完璧なる白と黒と、ピンクと、そして、秘密の灰色の線を明確に記憶していた。いや、記録していた。私は雇い主に讃えられる仕事をしたと、確信した。・・・彼女にみつかってしまったのは不覚だったが、彼女の観察をはじめてから10分は過ぎており、私の力もつきかけようとしていた。それに、私は彼女に発見されたことになんの焦りも感じていなかった。やがて、私は風にふかれて上下左右に枝と葉をゆらしている木々の間を通りぬけ、雇い主のところへと戻った。雇い主は、スマートフォンと、スティックが2つついた、四角いものを手に持っていた。やがて、スマートフォンを見つめていた雇い主は、微笑みを浮かべながら、そっと顔をあげて私のほうに視線を移した。スマートフォンに私の雇い主自身が映りはじめたからであろう。雇い主は、私を静かに彼自身の足下にそっと降ろした。そして、私をさっと持ち上げ、引き寄せて、私を少しなでながら、ささやいた。

「今日も、お疲れさま。でも、ついに、みつかってしまったな。もう、彼女の部屋の窓の外から彼女を見つめることは、できなくなってしまった・・・。まあ、しかたがない。しかし、君はすばらしいものを記録しつづけてくれた。本当にありがとう。ああ、それにしても、すばらしい、発明だ。君という存在は、本当にすばらしい発明だ」

 ささやき終えると、私の雇い主は、すぐに私を、私がいつも待機している箱の中へといれてくれた。その箱の外側には、私の姿が印刷されていた。4つのプロペラと、彼女のことを記憶、いや、記録するための、私の確固たる目、カメラを装着した、世間では「ドローン」と言われている、私の姿が。(了)

ショートストーリー「ギャル IN 0.02」

目を覚ましたら、視界がぼやけていた。・・・首が痛む。どうやら、頭の重さに耐えられなくなり、カクンと前に首がいってしまったためだろう。・・・それにしても、ずっと目の前にみえるものがおぼろげだ。目の前に見えているものが、どうやら女ものの有名なブランド・バッグだということは、特徴的な模様でなんとなくわかるが、とてもぼやけていた。

 寝ぼけているのか?・・・ガタン!と座っていた席に少し振動が伝わる。その振動で、曖昧だった意識が覚醒しはじめた。
 そう、俺は今日も残業をして夜遅くの電車に乗っているんだった。なんとか座ることができたわけだが、今日の仕事の疲れのせいで、座るやいなや、すぐに眠ってしまったらしい。

「次は、N駅N駅です。各駅停車A駅行きはこちらでお乗り換えです」車掌のアナウンスが車両の中で響きわたる。N駅。この急行電車の次の次の駅が、俺が降りる駅だ。よかった。寝過ごしてはいなかったことにほっとした。
 だが、ほっとしたのと同時にいままで感じたことのない違和感を覚えた。俺は焦った。俺はどうしてしまったんだ?
 どうして、俺の目の前の女もののブランド・バッグの模様が、いつまでたってもぼやけたままなんだ?
 俺は、そっと自分の目の方に手のひらを近づける。そして、少し長いまつげが直接手のひらに当たる感触を得た。
 そして、はっとした。やっぱり、そうだ。

 俺が普段かけている、身体の一部ともいってもいい眼鏡がなくなっている。俺は、あまりに激しく首がカクンとなってしまった勢いで足元に眼鏡が落ちてしまったのかもしれない、そう思って、自分の足元を見た。目を細めて。
 しかし、そこに眼鏡は落ちてはいなかった。少しずつ焦る気持ちが芽生えてきた。俺の眼鏡はどこにいったんだ?一体どこにいってしまったんだ?俺は、隣に座っている人にひじなどがあたらないように注意しながら、着ているスーツのポケットの中を探ってみた。しかしどこにも眼鏡が入っているような感触をつかめなかった。俺はビジネスバッグをあけて、中をのぞいてみた。しかし、やはり眼鏡はなかった。・・・俺は少し冷静になろうと、息を少し大きく吸って吐いた。つんと、電車の中に居座っている人の汗の臭いが鼻孔についた。

「次は、M駅。M駅です。お忘れもののないようにご注意ください」いつのまにか、最寄り駅の隣の駅まで電車が到着してしまった。
 目の前にみえていたブランド・バッグが消えていた。どうやら、バッグを持っていた人は、N駅で降りるようだ。
 すると、向かい側に座っている人がみえた。金髪の男だった。でも、どんな顔をしているのかは、全くといっていいほどわからなかった。のっぺらぼうのようにしか見えなかった。

 本当に俺の眼鏡はどこにいってしまったのだろうか・・・。最寄り駅までは5分ほどで着いてしまう。俺は右側に座っている人をちらっとみた。スマートフォンをいじくっている。・・・確か同じ駅で乗って、隣に座った人だったはずだ。あんまりじろじろみたら、よくないとはわかっているが、かなり短いパンツをはいており、綺麗な白い太股を大胆にのぞかせていたので、寝る前に、俺が座った直後に隣に座ったその人、女を少し意識してしまっていたから、間違いない。
 変な目で見られるかもしれないのを覚悟して俺は、太股を露わにしているその女に声をかけた。
「す、すみません」
少し迷惑そうな顔で俺のほうを女はみた。金髪でロング。巻き毛。濃いめの化粧をしている。ギャル系とでもいおうか。でも、隣とはいえ、顔はぼやけて見えるので、どんな顔をしているのか、かわいいのかどうかは、よくわからなかった。
「あの、なんというか、さっきまで僕眼鏡をかけていたんですけど、起きてみたら、無くなっていて。し、知らないですかね?」俺はおそるおそる、尋ねてみた。
 ギャルは、この男は一体何をいっているのかと思ったのか、すこし沈黙が続いた。しかしほどなくして、
「いえ、すみません。わからないです。落としたりしていないんですか?」ギャルは俺に尋ね返してくれた。かわいい声だった。
「そうかもしれないんですが、足元をみても、なさそうなんです」ギャルは俺のこの返答を聞いた後、下を向いた。どうやら俺の足元とその周辺をみてくれているようだ。ぼやけてはいたが、谷間をかなりのぞかせているように見えた。俺は、なんだか見続けるのはいけない気がして、少し視線をそらした。
「すみません、眼鏡、落ちていないみたいです」ギャルは再び俺のほうに視線を戻してそう言った。ぼやけていてもギャルだとわかる風貌だったので、正直少し恐かったが、案外親切な女だった。
「すみません。ありがとうございます」ひとまずギャルの親切に俺はお礼をいった。
「いえいえ。でも、本当にどこにいっちゃったんでしょうね?」ギャルは心配そうな声で言った。
「そうですね・・・」俺は弱々しく答えた。俺は目の前の世界がずっとぼやけていることに不安と焦りをとにかく覚えた。駅を降りてから、家まで徒歩でだいたい20分。俺の住むアパートまでには暗い道が続いているところもあり、そこを眼鏡なしで歩くというのは不安だった。ただ、家に帰れば、スペアの眼鏡がある。前に使っていたもので、さらに目が悪くなってしまった今となっては、かけても両目で0.4くらいにしかならないのだが、生活には困らないから、ひとまず早く、無事に家にたどり着くことだけを考えることにした。

「次は、I駅。I駅。E線はお乗り換えです」車掌のアナウンスが響きわたる。
 もう降りる駅に着いてしまった。俺はそっと立ち上がる。すると、隣にいたギャルも立ち上がった。どうやら、このギャルもこの駅で降りるらしい。
 プラットフォームに降りると、もちろんいつもと同じなのに、そこが、全く違う世界に見えた。もし普段から裸眼で過ごすことになったとしたら、と考えたら、それは全く知らない世界にずぅっと放り出されっぱなしのままになるような、そんな感じになるのではないかと、そう思った。
 目を細めながら出口につながる階段へと足を運ぶ。身体が覚えているので、問題はなかったが、それでも足元がおぼろげの状態で階段をのぼるのは少し怖かった。いつもよりゆっくり階段を上っていくと、腕にちょこんと少しつかまれる感覚がした。後ろをふりむくとさっきのギャルだった。ぼやけていながら、そういうところだけは、目がいってしまう自分が少し情けなかったが、上段からみると胸の谷間をのぞくことができた。なかなかのスタイルをもつギャルだと思った。

「あの、大丈夫ですか?」ギャルは心配そうな声で俺に話しかけてきた。
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」俺はそう言った。
「でも、なんか見ていてあぶなくみえちゃって・・・すみません、迷惑だったかもしれないけど、心配になっちゃって・・」ギャルはそう言ってぱっと俺の腕から手を離した。
「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから」俺は、できるだけにこやかになるように努めてそう言った。それに本当にぜんぜん迷惑じゃなかった。素直に嬉しかった。
「そうですか・・・。家までどのくらいかかるんですか?」ギャルは俺と足並みをそろえて階段を上りながら尋ねてきた。
「だいたい、徒歩20分です」俺は答えた。
「20分ですか?家、どのあたりなんですか?」
「えーっと、DP公園の近くです」
「DP公園の近くですか。そのまわりって暗い道、多いじゃないですか?あの、よかったら、家の近くまでついて行きましょうか?私もDP公園の近くにちょうど住んでいますし!」ギャルは俺の顔をのぞきながら、そう言った。いい匂いがした。
「い、いえ。いいです。そんな申し訳ないですから」俺は少しドキドキしながらそう言った。・・・・まずい。だいぶ俺は、このギャルのことを意識してしまっていた。そして、もしかしたら、このままこのギャルと、知り合えるかもしれないということに、どこか期待感を抱き始めている自分がいた。
「いえいえ。そんな気にしないでください」ギャルは笑顔でそう言った。
「・・・じゃ、じゃあお言葉に甘えて」俺はいつの間にかそう答えていた。

 そして、俺はギャルとともに帰路を歩いた。ギャルは俺の仕事のことなどを尋ねてきた。俺はそつなく答えた。俺もギャルに仕事をしているのかきいてみた。とあるブランドファッションのショップ店員をしているという答えを聞いた。なんだか、みた目通りの職業ですね、というと、そうなんですよ!とギャルは笑った。そんな他愛のない話をしているうちに、俺のアパートに通じるDP公園近くの、狭く、暗い道には入った。本当に、最低だと思うのだが、暗い道をギャルと歩いているうちに、この暗さがまたいけないのだろう、自分のアパートについたら、お礼にこのギャルを家に招いて、お茶などして、そのまま話がはずんで、なんだか、いいムードになって、そのまま・・・なんてことをついつい想像してしまった。電車の中や、階段の上からみた、やわらかそうな胸の谷間や、白い太股が思い起こされた。

 お互いの仕事の話をしているうちにやがて、俺のアパートの前まで来た。
「ここです」俺は言った。
「あ、ここなんですか。本当に私の家もけっこう近いんですよ!よかったです」ギャルはそう言った。
「助かりました。ありがとうございます」俺はお礼を言った。
「いえいえ。そんな、でも大丈夫ですか?眼鏡がないままで、明日とか・・・」
「大丈夫です。家にスペアがあるので」
「あ、そうなんですか!それはよかったです!」ギャルは胸のあたりで両手の指を絡ませながら、そう言った。その仕草がとてもかわいかった。
「あの、よかったら、お礼に、コーヒーでも一杯飲んでいきませんか?」俺は思い切って、このギャルを誘ってみた。
「え?そんな悪いですよ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。コーヒー淹れるのだけは自信あるんです」実際俺は、コーヒーには凝っていた。
「えー。いいんですか?じゃあ、一杯だけ!」ギャルは俺の誘いに応じてくれた。俺は、小さくガッツポーズをした。
「1階の一番奥の部屋が僕の部屋なんです」そう言って、いつものアパートでありながら、ぼやえているがゆえに、やっぱりどうもいつもと違うように見える、特になんの特徴もないアパートの奥へと進んでいった。
 俺は、ビジネスバッグの中から家の鍵をとった。鍵穴にしっかりと鍵をいれるために、顔を鍵穴のかなり至近距離まで近づけた。なんとか鍵穴に鍵をいれることができて、そのままドアをあけた。
「どうぞ」俺はギャルをまず招いた。
「おじゃましまーす」高いヒールを脱いで、おそるおそる俺の部屋に入っていくギャル。・・・正直、すでにまずかった。すこし俺のパンツが盛り上がってきていた。
早くスペアの眼鏡をかけて、ギャルの谷間と太股を、ちゃんと見たかった。
 俺はいつも通り、玄関のところで座って、革靴のひもを丁寧にといてから、ぬごうとした。しかし、視界がぼやけているので、やはりいつもよりも苦労した。

 俺は、はやる気持ちをおさえながら、ゆっくりと革靴を脱ぎ始めた。
 左の革靴をぬいで、次に右の革靴のひもに指をもっていたところで、首もとに衝撃が走った。はげしい電流が体をつたっていくようだった。俺は振り向いた。白い太股と、女が手に持っているひげ剃り機のようなものがみえた。それは、ひげ剃りではなかった。目を細めて、少しでも焦点をあわせて、それをみた。どうやらそれは、スタンンガンのようだった。・・・それがわかったと同時に、またそれが俺の体にあてられた。そこで、俺の視界は、ぼやけるどころか、真っ暗になった―
 
 聞き慣れた音が響いているのが聞こえた。俺はふっと目をさました。目の前に俺のスマートフォンがあり、そこからいつもの目覚ましがわりの音がながれている。俺は、スマートフォンを手に取り、めざまし機能をいつものように終了させた。
 ・・・・ここは、どこだ?俺は、ばっと体をおこして、自分がどこにいるのかを確認した。どうやらリビングにいるようだった。しかし、いつもみる風景では決してなかった。
 とにかく、ぐちゃぐちゃだった。リビングの中にある、なにもかもがすべてあばかれているような状況だった・・・。あばかれている?俺ははっとした。俺は、いそいで通帳やらお金やらをいれているタンス一番下右側をばっとみた。そこからは何もかもなくなっていた。もぬけの殻だった。俺は、リビングの中をとにかく見回した。俺の持っている金目のものがすべてなくなっているようだった。

 俺は混乱した。いったいなにが起こったんだ・・・?確か俺は、ギャルとここまで、きて、そしたら、ギャルが俺に、ス・・・スタンガンを・・・。俺は、はっとした。さっきのギャルは、どこにいったんだ?俺はいそいで玄関までいって、ドアをあけた。・・・いつもの夜の風景だった。なにもなかった。ギャルの姿はどこにもなかった。・・・と同時にもう一つ、俺は違和感を覚えた。
 どうして、玄関をあけた瞬間、いつもの風景と明瞭にわかったんだ・・・?

 俺は、さっき電車の中でやったように、自分の手のひらを目に近づけた。手のひらがまつげにあたることはなかった。むしろ、手のひらににじんだ汗のせいで、視界が、汚れた。そう、そこにはレンズがあった。俺は、また部屋の中に入り、いそいで洗面所にいって、鏡をみた。
 いつもの眼鏡をつけている自分の顏が鏡にうつっていた。・・・何でなくなった眼鏡を俺はかけているんだ・・・・?わからなかった。とにかくわからなかった。・・・と、鏡の右上に、なにかが貼られていた。俺がもっているメモ用のポストイットだった。そこにはかわいい文字でこう書いてあった。「眼鏡、みつかってよかったね!はっきりと目がみえるようになった、今の気分は、どう(笑)?」

 俺は、そのメッセージを読んで、とにかく怒りと後悔がこみ上げてきた。俺はリビングに再び足を運んだ。もしかしたら、眼鏡を外したら、世界が変わるかもしれない。そんな馬鹿なことを考えて、眼鏡をはずして、裸眼の状態でリビングをみた。

 やっぱり、ぐちゃぐちゃのままだった。

 もう、眼鏡があろうとなかろうと、そんなことはどうでもよかった。

 俺はただ、この現実から目を背けたかった。
 
(了)
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